「三島由紀夫の作品を読んでみたい」
「でも難しいイメージがあるなぁ」
「初心者でも読みやすい作品はどれだろう?」
日本を代表する稀代の天才・三島由紀夫。彼の作品にはとても難解なイメージをお持ちの方が多いと思います。
実際そういった作品が多く、私も読んでて理解するのに四苦八苦してしまいます。
そんな三島由紀夫作品のなかでも実は非常に読みやすい、エンターテイメント性に優れた作品もあります。
難しいイメージがあったけどこんな娯楽作品もあったんだ!と驚くと思います。
この記事では彼の作品の中で初心者におすすめのエンタメ小説を3つご紹介いたします。
1.三島由紀夫レター教室
職業も年齢も異なる5人の登場人物が繰りひろげるさまざまな出来事をすべて手紙形式で表現した異色小説。恋したりフラレたり、金を借りたり断られたり、あざけり合ったり、憎み合ったりと、もとれた糸がこんがらかって……。
解説 群ようこ
三島由紀夫レター教室は、なんと全てが誰かが誰かに宛てた手紙で構成されています。
なかなか斬新な構成です。そしてどこにでもいそうでありながら個性あふれる五人の登場人物。その五人の紡ぎだす手紙の文章もとても個性に富んでおり、ユーモラスで面白いのです。
現代ではメールやSNSの普及で誰かに手紙を書くという文化はだいぶ廃れてきていると思います。
そんな時代ですので誰かの手紙を覗き見るこの作品は余計に新鮮です。
また、レター教室とあるように手紙のお手本を学べる作品となっております。これを読めばメールやSNSの文章に活かせるようになるかもしれません。
冒頭の三島由紀夫氏の言葉ですが
このレター教室は、すこし風変りな形式をとります。五人の登場人物がかわるがわる書く手紙をお目にかけ、それがそのまま、文例ともなり、お手本ともなる、というぐあいにしたいと思います。
ちくま文庫 三島由紀夫著「三島由紀夫レター教室」
風変りな手紙形式で進んでいくユーモラスなお話を楽しみつつ、手紙の書き方まで学べるという一石二鳥な作品となっております。是非手に取ってみてください。
余談ですが私のお気に入りの登場人物は丸トラ一です。あなたのお気に入りは誰になるでしょうか。
2.お嬢さん
大海電気取締役の長女・藤沢かすみは20歳の女子大生、健全で幸福な家庭のお嬢さま。休日になると藤沢家を訪れる父の部下の青年たちは花婿候補だ。かすみはその中の一人、沢井に興味を抱く。が、彼はなかなかのプレイボーイで、そんな裏の顔を知り、ますます沢井を意識する。かすみは「何一つ隠し立てしないこと」を条件に、沢井と結婚するが…。
角川文庫 三島由紀夫著「お嬢さん」
タイトル通り、主人公は裕福な家庭のお嬢さんなのですが、美しい顔立ちとは裏腹に恋愛などいらないと豪語し、恋愛経験もありません。そんなお嬢さんが、父の部下のうちの一人に興味を抱く。
しかしこの男、お嬢さんの目から見ると何か怪しい。結婚をし、端から見ると幸せそのものなのですが、一度疑いだしたらもう止まりません。
初心なお嬢さんの心に不安・猜疑心が生まれ、どんどん疑心暗鬼になっていく。
この作品で私が面白いなと思ったのは、とても幸せな日常なのに、男の怪しい行動とお嬢さんの猜疑心によっていつこの幸せが崩壊するのか、幸せな日常でありながらスリリングに描かれている。
指輪物語のように強大な悪の存在がいるわけでもなく、貞子のようにおぞましい恐怖の対象が呪っているわけでもありません。
それなのに幸せな日常をハラハラさせて読ませる三島由紀夫の力に感嘆いたしました。
お嬢さんと男、二人の結末がどこに向かうのか是非確認してみてください。
3.命売ります
自殺に失敗し、「命売ります。お好きな目的にお使い下さい」という突飛な広告を出した男のもとに、現われたのは?
解説 種村季弘
タイトルからして引きつけられる異色作です。
自殺に失敗し、死を恐れることがなくなり新聞に「命売ります」と広告を出す。
この生に執着が無くなり死を恐れないというのは、逆に無敵になってしまうという異様な強さを発揮します。
次から次へ仕事を受けてはその無敵感ゆえに、命を売っても生き延びてしまう。
しかし仕事を受けるたび出会う人間は変わり、環境も変化していきます。それに伴い主人公の心境も変化していきます。
今までは「死を待つ」だけで恐れることがなかった主人公が、「いつ死ぬかわからない」ことにおびえだす。
この相反する感情へと変化していく心理描写が非常に巧妙です。
「死」を取り扱っていますが、エンタメ作品ですので重すぎず軽すぎず、それでいて哲学的でもあり、三島由紀夫氏の多彩な表現を味わえる異色作です。
まとめ
以上、初心者におすすめの読みやすい三島由紀夫のエンタメ小説3選!でした。
三島由紀夫氏の作品の中でも非常に読みやすい3作品をご紹介しました。
この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。