「は、は!!!」
「はくしょん!!!」
「は~。だれか噂してるのかなぁ」
くしゃみをするとそんなことを考える人が多いのではないでしょうか?
普段何気なくくしゃみをし、誰か噂してると思う。
こんな日常的な行動のくしゃみですが、調べてみるととんでもなく深い意味が隠されていました。
この記事では驚くべき「くしゃみ」の歴史をご紹介しようと思います。
- 「くしゃみ」の由来「くさめ」
- 日本だけじゃない!海外のくしゃみ
- なぜくしゃみで「噂してる」と思うのか
「くしゃみ」の由来「くさめ」
「くしゃみ」という行為ですが、古代の日本ではくしゃみをすると、口から魂が抜けて寿命が縮まると思われていました。
くしゃみは自分の意志とは関係なく勝手に出てしまうものなので、自分ではない悪霊かなにかが憑りついていると思われたわけです。
もともとは「くしゃみをする」ことは「嚏る(はなひる)」という動詞でしたが、嚏った人に対して周りの人間が寿命が縮まらないようにおまじないとして「くさめ!」と呪文を唱えるようになり、それがいつしかくしゃみになり、「嚏る」行為そのものを「くしゃみ」と呼ぶようになりました。
ではなぜ「くさめ」が呪文なのか。
諸説ありますが、学のある身分のものが陰陽道の呪文で「休息万命(くそくまんみょう、くそくまんめい)」と呪文を唱えていたものが、縮まってくさめになった説。
休息万命は命逃げないで!みたいな意味のようです。
休息万命を庶民が真似しだしたものの、意味がわからないので音だけ真似て「くさめ」になった説があります。
または「糞食め(くそはめ)!」がそのうち「くさめ」になった説もあります。得体の知れない悪霊を罵倒する意味だったのではないでしょうか。
江戸時代の庶民はくそくらえと唱えていたようです。
面白いことに沖縄ではくしゃみをすると「クスクェー」と唱えたらしく、これはまさしく「くそくらえ」を意味する言葉です。
沖縄だけでなく全国的にくそくらえという地域があったようで、北は北海道のアイヌの言葉にもくそくらえと唱える言葉はあったそうです。
日本だけじゃない!海外のくしゃみ
なんとこのくしゃみをした人に対してくさめと呪文を唱えるという行為、日本だけではございません!
海外でも古代からくしゃみをした人に対しておまじないを唱えていたのです!
古代ギリシャでは「ゼウスよ助け給え」、古代ローマの人々も健康の言葉を、英語圏ではくしゃみをした人に対して「Bless you」と唱えています。神のご加護をという意味ですね。
実際にアメリカのyoutuberの人がくしゃみをした人に対して「Bless you」と言っている動画を見たことがあります。
今では「お大事に」くらいのニュアンスのようです。
それだけにとどまらず、ヨーロッパやアジアの各国、少数民族にいたるまで、世界各地で古代からくしゃみに対して呪文を唱えていたのです!
生まれた土地や時代は違えど、みな同じように感じて同じようにふるまう、同じ人間なんですね。
ここで面白い話があります。スペイン人の探検家がアメリカ大陸に到着し、現地の族長と会った際、族長がくしゃみをしたら族長の従者たちが祝福の呪文を唱えました。それを見たスペインの探検家は部下に
「世界はひとつだろう?」と言ったそうです。
地域や言語にかかわらずみな同じように健康や命を気遣う呪文を唱える。くしゃみひとつでまさしく世界はひとつというのも説得力があります。
なぜくしゃみで噂してると思うのか
くしゃみは自分の意志とは関係のない得体のしれない力が働いているという考えから、くしゃみ占い、くしゃみ判断というものが出てきます。
くしゃみの回数だったり、くしゃみをした方角、曜日、時間などなど、様々な方法で占いをするようになりました。
日本では回数による占いがなじみ深かったようです。
日本では
「一褒められの二惚れられ、三誹られの四風ひく(江戸)」(三田村 1998: 22)、
一ほめられ二そしられ三ぼめられ四風邪ひく(東京)、
一ほめられ二笑はれ三そしられ四風引く(丹波天田郡)、
一ほめ二そしり三笑はれ四風引く(岐阜)、
一つよし二つうわさ三つ風(甲州東八代郡)、(柳田1962 :465)、
一つ褒められ、二つ憎まれ、三つ風邪引き(堀 1927b:33)
と、回数によって判断することが広く行われている。これらは、自分のいないところで話されている噂の判断であるが、クシャミは人に噂されているから起こるとする観念は中国、日本、韓国、台湾、ベトナム、カンボジア、フィリピンなどアジアに多く、またアフリカ、太平洋、アメリカ先住民など広く見られる観念(堀 1927a:114-115 ;土田 1988 :22 ;国際日本語普及協会1999 : 57 ;小馬 2003 : 116 ;常光 2006a : 237-257)として重要である。
クシャミと人類文化 身体音からの人類文化研究の体系化のための試論:小野地 健
このように、昔の日本では回数によって誰かに噂されているというくしゃみ占い、くしゃみ判断が行われており、これが今現在の日本でくしゃみをすると誰かが噂しているという考えの元になったものと思われます。
だいたい一回目は褒められていることが多いみたいですね(笑)
まとめ
普段何気なく出てしまうくしゃみ。この言葉には何千年も前から続く人間の想いがつまっている気がします。
くしゃみなんて言葉ひとつにこんなに深い歴史が隠されているとは思いもよりませんでした。
これからはくしゃみをする際は、「誰かが噂してるな」だけでなく「一回だから褒められてるな」「四回目だから風邪ひくかも!」など楽しんでみてはいかがでしょうか。
この記事が誰かの役に立てたら幸いです。では。